発問・説明・指示を超える対話術 (さくら社),子どもの笑顔を取り戻す! 「むずかしい学級」リカバリーガイド,小学校初任者研修プログラム 教師力を育てるトレーニング講座30(明治図書)・気づいたら「忙しい」と言わなくなる教師のまるごと仕事術(黎明書房)小一・二教育技術連載中他。学級経営学会理事。親サイトはhttp://yarman.server-shared.com/
2013年4月15日月曜日
エピソードで語る教師力の極意
私は、小学校の教師として始めて転勤した年、父を火事で亡くしている。
理不尽な父ではあったが、私が小学校の教員採用試験に合格した折には、実に普通の父親のように、無邪気に喜んでくれた。
そんな父が、小学校の教員になった私に掛けた言葉がある。
「落ちこぼれだったことを忘れるな」という言葉である。
父は続けて、「お前は、保育園のときに、縄跳びができない子だった。保育園で一番最後にできたのがお前だった」と私に語って聞かせた。
「なにを、いまさら二〇年も前の話を持ち出して」と私は内心腹を立てた。
腹立たしさも相まって、このときの状況も、父親のちょっと笑ったような横顔も、鮮明に思い出せる。
本書を執筆するにあたって、何度も思い出したのが、この父の言葉だった。
私という教師の来歴は、実に失敗の連続だ。
失敗をして、そして身にしみて反省し、改善のための方法を模索して、なんとか解決をする。
解決ができると、今度はすぐにまた思い上がって自分を過信する。すると、それをたしなめるように、次の失敗が起きるということを二〇年間続けた気がする。
自分が失敗したことの苦さを忘れなければ、次の失敗も予防することができるだろうし、失敗した人の気持ちも理解できるだろうにと思う。
しかし、私は、そういう理想の人生を歩んでは来なかった。
何度も、何度も同じような失敗を繰り返してきたのだ。
「お父さん、やっぱり落ちこぼれでしたよ」と言いたくなる。
しかし、「落ちこぼれだから、仕方ないんですよ。こういう前進の仕方しかできないのです。ですから、この調子でこれからも落ちこぼれとして学んでいきますよ、お父さん」と開き直るという手もある。
そして、「ただね、お父さん、落ちこぼれですから、できない子の気持ちは分かるんですよ」とも言いたい気もする。
いや、本当に伝えたいのは、「恵まれた教師人生です。こうやって、幼い頃からの自分の人生を見つめ返すと、教師になるために必要なことは、すべて与えられ、教師になってからも、私は落ちこぼれなりに、成長できるよう様々な方々と出会わせていただき、そして機会にも恵まれています。お父さんにも感謝しています」ということだ。
この本を仏前に供え、父に捧げる。
(あとがき)より
http://www.amazon.co.jp/dp/4181372111/ref
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