2021年11月23日火曜日

新しいセミナー考

 第3回北フェス教職プログレスセミナー 終了

◆新しいセミナー様式についての雑感◆
11月21日に上記のセミナーが終了した。このセミナーはオンラインで行われ、参加者は20名に満たないくらいだった。
内幕を言えば、このセミナーは私どものサークル(北の教育文化フェスティバル)の30代前半の先生方が企画から運営までを行った。私は、告知以外は当日までまったく関わっていなかった。
会は大きく言うと二部構成だった。
第1部は「子ども理解」「学級経営」「授業づくり」についてのミニ講座があった。この「子ども理解」「学級経営」「授業づくり」の順番にも当然企画者の意図があっただろう。ミニ講座には、「こうすればうまくいく」という話はまったくなかった。その代わり、それぞれの実践者の自己課題の自覚に至る過程、さら改善のための試行錯誤が、赤裸々に、しかし冷静に語られた。1990年代からセミナーにかかわってきた私には、セミナー文化が大きく変化したのだと感じられる時間であった。それぞれのミニ講座のあとには、少数に分かれてのブレイクアウトルームでの交流があった。この流れは、かなり戦略的だと感じられた。ミニ講座の担当者があえて「成功」を語ることに禁欲的だったのは、ブレイクアウトルームで参加者が自然な形で自己開示、自己省察ができるようにしたかったからだろう。また、それぞれのルームには、サークル事務局が配置されていた。その事務局員が、参加者の思いや現状の課題をうまく引き出していた。会の全体に流れる企画者のさりげない、しかししたたかな戦略を感じた。
第2部は、「子ども理解」「学級経営」「授業づくり」のブレイクアウトルームを用意して、自分の悩みや課題に沿ったルームを選んでもらうという趣向だった。途中での移動も可能で、参加者の主体性を重んじるつくりとなっていた。この段階になると、事務局と参加者の一体感も高まり、参加者はおそらく自分の課題について、かなり率直に話をすることができたのではないかと推察できた。
この第2部から私は本格「参戦」したわけだが、ややもすると1990年代型研修の癖が出て、「そういうときはねえ~」と語りそうになった。いくつかの場面では、実際にそのようにしてしまった。そのたびに、企画者の意図を思い返し、質問をすることで参加者をサポートするように心掛けた。
さて、30歳代前半の先生方が企画、運営した今回のセミナー。私は、新しい時代の研修方略をある程度体現したものではなかったかと感じた。
1990年代型のセミナーの問題点は、ずばり参加者が自分の課題について「解決した気になる」という点にあったのだと思う。カリスマ講師から与えられる「答え」は、それを知った時点でかなり合点がいくものである。だからこそ、参加者はそれを知っただけで「解決した気になる」。しかし、現場に戻ってみると、実際には解決できない場合がほとんどだ。その上、解決していないのに、本人は課題が解決できたと思っているだけということも多かったに違いない。こうした場合、同僚とのハレーションとなってある問題が顕在化するという場合も多くあった。
このように、カリスマ講師から教えられるだけでは、教師の抱える課題は実のところ解決しない。しかし、そうはいっても課題を抱えている教師は、--特にやる気があり、意識が高いそうした教師たちはーーそのままで何もしない自分を許せないので、結局はセミナーに繰り返し参加してきた。そして、元気と勇気だけをセミナーでもらってきたのである。もちろん、そのことが100%悪いとは言えない。
私が、標記のセミナーに参加して印象深かったことは、個々の教師が持つ課題が完全に個別のものであり、結局のところ本人にしか解決できないことであるということを、前提にしているという点である。だからこそ、登壇者は成功例を語らなかったし、参加者に大いに語ってもらったのだと思う。自分で正確に状況を把握し、自分でできることを自分で見つけ、自分で実践することでしか、結局のところ自分の課題は解決できない。では、セミナーに意味はあるのか? それは、もちろん、ある。このプロセスを、体現することが個人で難しい時に、セミナーは必要である。そこには「問いかけてくれる人」「聞いてくれる人」「共に見つめてくれる人」がいるからだ。

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